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● 演奏理念
結局、今ここで申し上げられるのは、とにかく音楽が好きだということだけかもしれません。
3歳でピアノを始め、最初に好きになったのは、ベートーベンのピアノソナタ(熱情、悲愴、月光、ワルトシュタイン)。 『月光』の第一楽章の静と、それに相反するかのような第三楽章の動。 『ワルトシュタイン』の第一楽章の力強さ。 『熱情』『悲愴』の激しい感情の揺らぎ。 このような感情的で情熱的なものに惹かれ、よく弾いていました。 それに並行して、バッハの『ブランデンブルグ協奏曲』もよく聴いていました。 この曲は、バロック時代の貴族の優雅な生活、城、風景が目の前に広がるようです。 これらに端を発し、ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキー、マーラーと、様々な音色が溶け合う交響曲をたくさん聴きました。 初めて買ったレコードは、リムスキーコルサコフ作曲の『交響曲シェヘラザード』(カラヤン指揮ベルリンフィル)。 さらに、小澤征爾指揮のボストンフィルの『惑星』のレコード。 特に、『火星』、『木星』では、まさかというところでのフォルテやピアノ、そしてテンポの変化に驚きました。 そのことを受けて、様々な指揮者による演奏の違いを、ラジオやテープに録音し聴き比べていました。 一方で、中学、高校時代にバンドブームが訪れます。 80年代のアメリカンポップス、ブリティッシュハードロック、フュージョンを聴き始め、コピーバンドをしていました。 ハードロックや、フュージョンには、ギターのアドリブソロがあります。 ハノンのスケールのようなテクニックを要する速いフレーズ。 クラシックでは譜面どおりに音を変えずに演奏しますが、アドリブソロによって、原曲を自分なりに違った形で表現できます。 この頃から、アドリブソロに魅力を感じ始めます。 そして、高校3年生の夏に行った「フェニックス・ジャズ・イン」。 このときには、ロン・カーター、阿川泰子、坂口明が出演していました。 エネルギッシュ且つ繊細なアドリブが互いに掛け合う。 4ビートの気持ち良さ。 今まで触れたことの無かった綺麗なコードの響き。 感激の連続でした。 そして、大学進学後からは、ジャズにのめり込みました。 ビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ブランフォード・マルサリス。 その中でもブランフォード・マルサリスのバックメンバーであったケニー・カークランドとエリス・マルサリス。 この二人は、私が最も敬愛し、影響を受けたアーティストです。 ケニー・カークランドは、ピアノの上を踊るかのような演奏、且つ、耽美で繊細でな音色。 エリス・マルサリスは、柔らかく、心に染みる音色でテーマを演奏し、決して派手ではない洒落たソロ。 深く感銘を受け、私自身も演奏活動を開始いたしました。 30代になり、あるコンサートでのボサノバの演奏。 お年寄りに喜んでいただけたことにとても感動しました。 それをきっかけに、ボサノバ、ブラジル音楽に目を向けるようになります。 絶妙で洗練された綺麗なコード、自然を感じるさわやかなサウンド、美しいメロディー。 一方で、ピアソラや、トマティーノのタイトで背筋が伸びるような、スパニッシュ音楽、改めてクラシック音楽。 そしてジャズピアノトリオ。 それまでは、サックス、トランペットのカルテット、クインテット、ピアノが入っていない編成のものをよく聴いていました。 管楽器の音が好きで、管楽器のようなソロをピアノで弾きたかったからです。 次第に、編成のサポートメンバーの音楽が聴いてみたいと思うようになり、ピアノトリオを聴き始めました。 それぞれに、テーマの捉え方も、曲のアレンジも全く違い、個性があって大変興味深いです。 私にとって音楽は、今の自分を表現するために、欠かすことができないものです。 これは、現在の自分自身の再確認であり、生き方そのものでもあります。 音には性格がそのまま反映されるので、日頃から、謙虚で穏やかな気持ちを保って演奏に臨むように心掛けています。 共演者との掛け合い、駆け引きによって、良いサウンドを生み、その時々の音色を、聴き手の方々に広く伝えて、一緒に楽しんでいただきたいと考えています。 年老いたときに、最高の演奏を。 私が目指すのは、優しく、柔らかく、和に通じる音です。 この音を生涯に渡り、追求していきたいと考えています。 ピアニスト 緒方公治(おがたこうじ) |
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